

そのために、歌詞はサオリ・キャパスさんが、あらゆるメディア資料を照らし合わせつつ、日本人にもよくわかるように訳しておられます。私は冒頭にコメントを書きました。ミュージックマガジンの斉木氏によるライナーノーツも分かり易いです。
これがそのコメント文。*************************************************************************************

アメリカ南部のメキシコ湾沿いをハリケーン・カトリーナが襲ってから1年経つ。しかしニュー・オリンズの復興は遅々として進まない.洪水にあった地域は電話,郵便がつながっていない.水が入らなかった地域でさえ、ゴミ収集は週に1度来るか来ないかである。ビジネスや学校は徐々に開きつつあるが、ハリケーン前とは比べ物にならない。というのも、住民の半数以上が未だに避難先で仮住まいだからである。にもかかわらず、経済援助は打ち切られようとしている。
連邦政府はルイジアナを、ニュー・オリンズを見捨てるつもりか。テレビではハリケーン直後から「貧乏な黒人が逃げ遅れて,店から商品を盗んでいる」という報道がなされた。どうしようもない人たちだ,自業自得と言わんばかりである。しかしこれは事実ではない。避難するということ自体が困難だから、自分の家が嵐に耐え得ると判断した人は残ったのである。ライフラインが切れたのに,食料も水も支給されないからこそ、人々は開いている店に押し掛けたのである.同時期にアメリカ各地から集まって来たギャングが狼藉を働いたのとは違うのである。
What's going on? 壊れた堤防や水をかい出すポンプが1年以上たった今なお、完全に直っていない。担当者はマスコミの糾弾に対して「カテゴリー3のハリケーンに耐えられる」と言っておきながら、実際にハリケーンがこちらに向かってくると「とても持ちこたえられまい」などと言い逃れをする。
What's going on? 全世界からこの町への寄付が集められていると聞く。それはどこにどう使われているのか.家の修理のために政府から援助される金はいつ届くのか。
ニュー・オリンズはアメリカの音楽の故郷であると言っても過言ではない。ジャズ、R&B、ロックンロール、すべてこの町で生まれて発展して行った物である.この町では未だに人々が毎週のパレードを楽しみ、若いミュージシャンが育って行く.その文化を世界の人々に紹介し,楽しんでもらうこと、これがニュー・オリンズのミュージシャンの使命である。そして、それが今程大事な時はない。この町の復興が市民一人一人似かかっているように,一人一人のミュージシャンの役割は大きい。
更に、子供たちにこの文化を伝えること。「あんたのおばあさんの時代には、ジャズフューネラルというものがあった」などという言い方はしたくない。そのためには,ミュージシャンだけでなく、聴衆が,踊る人たちが帰ってこなくてはならない。

いつの世でも,政府は、庶民の生活を犠牲にしてきたのかもしれない。戦争,災害に遭った人々。しかし,一人一人の生活は続くのである。そこに文化が生まれる。それを子供に伝えて行く。Life is going on.
マーヴィン・ゲイの普遍的な言葉を借りて,今、ニュー・オリンズから、ダーティー・ダズン・ブラスバンドが送るメッセージである。