Gentily で生まれ育った人の話
空手教室で、その2つ年上の身体の大きい男の子のことはもう4年も前から知っていたのですが、うちの娘が彼と仲良くなり出したのは最近です。手裏剣や刀の話がきっかけらしい。父親同士も仲良くなったらしい。5月のファッツ・ドミノのコンサートにおっさんはこの子のご両親を招いていたし、お父さんのB氏はおっさんの手術の時、結構心配してはりました。 で昨日、空手クラスの後「うちの娘がW(その男の子)と遊びたいそうなんですが」というと「ここからすぐです。水着持ってるなら,明日にでもいらっしゃい」 とんでもない暑さ(華氏100度=摂氏38度)なんでそれもよかろうと連れて行きました。 アメリカの場合、こうして親が友達の家に連れていかねばならぬ=親同士も気が合わないと、ということがあります。今日は恥ずかしがりやの娘は「ママも一緒に居てね。初めてのおうちだし」 そうじゃなくても、一応、どんな家なのか見る必要があります。 結局2時半から6時までずっとお邪魔する羽目にーーーお母さんの話が面白かった。 「貴方おうちはどうです?」に始まって私の保険の話、空手の話、また戻ってハリケーンの話、教育の話。 B氏もお母さんのCさんも生まれ育ちはGentily(私の家のあるとこ。洪水の被害大でまだゴーストタウンだが、元々はいろんな階層のいろんな人種の人が集まって、持ち家の多い地域)、それも壊れたLondon Canalのすぐ側だとか。 「Ivan(カトリーナ前年のハリケーン。アラバマの方を襲ったが被害少なし)まで、避難なんかしたことがなかったわ。よその人には分かってもらえないことなんだけど。 ハリケーンの時は、低い物は上に上げて、外に砂袋を並べて、料理もしておいて、皆ただ家でじっとしていたものよ。 あの堤防(ロンドン)は壊れたことなんかなかった。水が乗り越えてくることはあったけど。家の中に1インチぐらい入って来たりしてね。長靴を履いて遊んでたものよ。 大体、50〜60年代なんか、皆貧しかったんだから、いい車(州外まで運転できる車)でよそへ逃げてホテルに泊まって、なんてほんとの金持ちだけがすることだったわ」 彼らの家は17th Street Canalからそんなに離れていないMetarie(ニューオリンズの対岸)側にあります。 「Rita(カトリーナの1ヶ月後のハリケーン)の時は戻ってきてたの。あそこの堤防がまた壊れるかもしれないという見通しは発表されてなかった。後から工兵隊が認めたんだけど」 「大統領と知事が変われば少し良くなるかなーーとにかくね、危ない水路は閉めちゃうべきよ。Orleans Ave.の真ん中が広いでしょ、あれは元々水路だったのを潰したの。だから前例のないことではない。そうやって自然に逆らわないで,Mother Natureに任せるべきよ。金のかかる水門なんか作らないで。そうしたら私はここに居てもいい」 ちょうど5時のニュースでは市会議員Oliver Thomasが汚職問題で辞任に追い込まれるだろうという見通しを述べていましたが 「これは罠でしょうね。この人、スパイク・リーの映画に出たし。この汚職問題だって、事実としたら前の市長かそれ以前の話でしょ。今頃になって持ち出して」 確かにこの議員は、つい先日も「壊れたのはニューオリンズのじゃない、連邦政府の堤防です」と言っていたばかり。 教育関係で面白かったのは「うちの子はA.D.D.と言われたの。初め薬を貰ってたんだけど、それは気分が悪くなるからって本人が言い出したんでやめたの。注意して観察したら、インスタントや学校の変な給食を食べた後は気が荒くなるみたいなの。」 「冷凍食品について言えば、カトリーナの後、家に戻ってきたら冷凍庫の中の肉やなんかは腐ってるでしょ。ところが冷凍食品は臭いすらしない。洗ったら食べられるかな,って感じ。そんなのはおかしいでしょ、1ヶ月ほっといても食べられそうなんて。それだけ保存剤やなにかが入ってるってこと。そういう化学物質がうちの子には良くないんじゃないかと思って、もっと頻繁に料理することにしたの。そうしたら落ち着きがよくなった。だからADDじゃないのよ。勿論科学的にこれは証明できないけれど、私は事実として知っている」 ADDは集中力がないとかすぐ喧嘩するとか、そういう問題児に言われたりしますね。でも外ではW君は、うちの娘に水泳を教えようと一生懸命やっている。かれこれ2時間以上。楽しそう。 初めは「ママはそこに座っててね。でも見ないでね」と難しいことを言ってた娘も飛び込んでは上がって来たり、深い所にもちょっと行ってみたり。全然上がってこないでずうっとやっていました。 「私たちはそうやって(避難はしないで)うまくハリケーンとやってきたのに、あんなことになって、もう皆どうしていいかわからない。私は箱に詰めた物やなんか出す気になれないで、そのまま物置に置いてあるの」 私は新しい家の中を想像することが出来なくて、殆ど大工さん任せ。調度も何も揃える努力をしていない。 「そう。失った人はそうだし、失わなくて物はある私はこんなふうだし。」 6時前「さあ、もう出なさい」と言われて娘は着替えに行きましたがW君は「ご飯も食べてかない?なんかあるよ」と大人みたいに言う。犬を家の中に居れてきたからそろそろ帰らないと、と言いましたが、ま、喧嘩もせずにずっと遊べて大したもんだ。 Old friends come and go. |